経営学では説明しきれないこんにゃくの謎

マスターの話、納得はしてる　・・・　してるけど

どこか譲れない所があって

だから、新幹線に乗ってしまった

 

流れていく景色を見ながら

だんだん冷静になってくると

ドンドン、自分が情けなくなってきた

 

俺は貴方に相応しいのかな？

我儘ばかりで　・・・　迷惑ばかりかけてる　・・・

自信を無くした状態で駅に降り立った

 

 

京都駅で有名料亭が手掛けた駅弁を買って

マンションに向かう

帰って来てるかな？

 

マンションの入口、インターホンを押しても返事がない

まだ戻ってないんだ　・・・

胸ポケットから鍵を取り出して中に入る

部屋は真っ暗　・・・　

明かりを点けると、中は綺麗に片付いてた

ベランダの洗濯物が風に揺れてる　

俺が脱いでいった部屋着やパジャマが干してあった

 

それを見て泣きそうになった

ここは俺の家　・・・　

離れてても俺の家なんだ

 

洗濯物を取り込んで畳み

ソファーの上に置いた

 

貴方の優しさが俺をふんわりと包み込んだ気がした

 

 

着替えを済ませソファーに座った時

鍵が開く音がした　・・・

 

玄関から俺を呼ぶ声がする

その声に応えることが出来ない　・・・

自分の我儘に呆れて　・・・　穴があったら入りたい

 

それに何て話したらいいんだろう？

頭の中がグチャグチャで　・・・

どうしていいか分からなくなった

 

 

部屋に入ってきた貴方は

ポカンとした顔で俺を見た

 

そりゃそうだ

「週末待ってるね」

そう言って見送ってくれたのが昨日

 

なのに大きな荷物を持った俺が

部屋着でソファーに座ってたら

驚くを通り越して呆れるよね

 

何度も「出張か？」と聞かれても答えられない

だって　・・・　嫌われるかもしれない　・・・

 

先に風呂を勧めて、夕飯の準備をする

テーブルの上、俺が買ってきた弁当の横にコンビニの袋

中には温かいおでんが入ってた　

それ以外に入ってるのはビールだけ　・・・

 

まさかこれが夕飯？

 

「ああ　・・・　腹減った」

貴方が頭を拭きながら部屋に戻ってきた

 

「ねえ、これだけ？」

貴方が不思議そうな顔で俺を見る

 

「夕飯の事？　・・・　うん、そうだけど」

 

これだから困るんだ　・・・　

この人一人だと食べない　　・・・

 

「俺にやつれてたら怒るって言ったけど

　貴方もだからね、痩せてたら怒るから」

 

貴方が不服そうな顔をして

 

「一人分には充分のおでんだと思うけど

　大根、牛すじ、こんにゃく、玉子、締めのうどん　・・・　

　これだけ食ったら腹いっぱい

　それに冷蔵庫に残り物もある」

 

「そんな訳ないでしょ

　ダメだよもっと食べないと」

 

「ちょっと待て！お前は何をしに来た？

　食事のチェックに来たの？」

 

「そうだよ！」

 

「は？　どういう意味？」

 

訝しげな眼が俺を射抜いた

拙い　・・・　食事くらいはゆっくり食べたい

 

「その話は後でするから　・・・

　取りあえず食べよう

　俺もお腹が空いたから」

 

冷蔵庫からビールを取り出して

テーブルの上に置いた

 

 

貴方は渋々椅子に座って

コップにビールを注いで一気に飲み干して

温め直したおでんに箸をつけた

 

「じゃあ、飯食う間は何も聞かない」

 

「後でゆっくり話す

　ねえ、これも食べてね」

駅弁を貴方の前に進めた

 

「この駅弁高かっただろ？」

 

「それほどでは　・・・　

　結構有名な駅弁みたいだよ

　残り少なかったから」

 

「じゃあ、それも食う

　おでんも半分ずつな　・・・　

　大根美味いぞ」

 

そう言って、ニッコリ笑った

 

 

 

＜続きます＞